優れたリーダーになるには、どのような資質が大切なのでしょうか?
「人望」「巻き込む力」「引っ張る力」「教育力」など、色んな資質を思い浮かべると思います。
それらも大切ですが、心理学や脳科学の研究では、リーダーに必要な資質がわかっています。
すでに会社でリーダーの立場の人や、これからリーダーになろうとしている人、上司や社長のリーダーシップに対して不満を持っている人に対して、リーダーが大切にすべき資質、身につけるべき資質を解説します。
優れたリーダーとは?
私はこれまで5社で働いたことで、リーダーとされる多くの人を見てきました。その中には、優れたリーダーもいましたし、ダメダメなリーダーもいました。
その経験のなかで、優れたリーダーになるには必須の資質があるように思いました。
スタンフォード大学の心理学者のスティーヴン・マーフィ重松氏は、優れたリーダーとは「アサーティブ」なリーダーであると述べています。
「アサーティブ」なリーダー
アサーティブ(assertive)とは、主張的、積極的という意味です。積極的に、お互いのことを考えてwin-winを目指して主張するということです。
つまり、主張的ではあるけれども、「お互いのことを尊重し、人を否定することなく、自分とチームの利益のために行動できるリーダー」が優れたリーダーの資質だということです。
そして、アサーティブなリーダーは、以下のような人物であると定義されています。
バランスよく自己主張をし、チームを引っ張る人物
積極的な強い主張ばかりしていたら威張っていると思われますし、逆に弱いもの言いだと頼りないと思われてしまいます。
バランスを取りながら積極的に自己主張することで、成長を促し、人を動かすのが優れたリーダーなのです。
優れたリーダーに必須の資質
ここからは、このアサーティブリーダーになるために必須の資質と、なるための方法を解説していきます。必須の資質をまとめると以下です。
- 信頼を得る
- 支援する
- 変容をもたらす
- 多様性を活かす
これらの資質を満たすための方法を紹介していきます。
リーダーに必要な資質1.信頼を得られる
リーダーは多くの人から信頼を得られなければなりません。
リーダーはあらゆる人と関係性を築かなくてはなりませんし、人に行動してもらうためには、この人の言う事なら協力してもいいと思ってもらわないといけないからです。
そのためには、ありのままの自分で信頼を得られるのが資質です。信頼を得られる人の資質は以下です。
自分を知る
信頼を得るには、相手の心に寄り添わなくてはなりません。相手に共感しないといけないのです。
そして、共感するにはまずは自分を知るのが資質です。自分の心理を知ると、相手の気持ちに共感ができるようになります。
例えば、人から話を聞いてもらえた時の喜びを知ることができるので、同じように相手もどのように話を聞いてほしいかがわかりますよね。
このように、相手の心理を理解するためにも自分を知りましょう。そして、相手に共感をしましょう。
弱さを受け入れる
リーダーは、自分の弱さを受け入れられなくてはなりません。
弱さを認めるリーダーであれば、部下はその率直さや正直さをみて、人間として信頼できると感じ意見を言うようになります。
リーダーが弱さを見せることで、メンバーが進言しやすい空気も作られます。
弱さを認める人は強くみえるという効果もあります。自分の内面的な弱さを見せられるというのは、リーダーに必須の資質でしょう。
役職を外す
役職や地位などの役割を忘れ、ありのままの姿でいることがリーダーの大事な資質です。
役職がつくと、人は自分を勘違いをしてしまいます。常に役職ありきで自分をとらえてしまい、自分を偉いと勘違いしてしまうのです。
そうなると、自分の弱さを見せることなどもできませんし、他者と違うと考えて壁を作っているので共感などできません。
たまたま役職があるが、他者と同じように弱さを抱えた人間だと思っていれば、妙なプライドを振りかざすことはありません。
目的を持つ
「生涯の大きな目的を持つ」というのも大事な資質です。
「他の課がこんなヒット商品を作った」とか「同期の人間が出世した」などの情報によって嫉妬したりすると、「自分とチームの利益のために行動する」というリーダーの本質から逸れてしまいます。
ですが、成し遂げたい大きな目的を考えることで、他者と比較することがなくなります。自分の目的に立ち返ることで、自分を見失うことがなくなるのです。
目的を持つことで、他者と比べたり嫉妬するという、リーダーにとって不要の感情を消すことができます。
言動と行動を一致させる
言動と行動を一致させるというのも、リーダーに必須の資質です。
言動と行動が違うと、大きく信頼を損なうことになってしまいます。
上司が「この件は後日またお願いするよ」と言うと、部下はずっと覚えています。そこで上司が忘れてしまうと、部下は上司のことを信用できない人間だと判断します。
自分が行うと宣言したことを実際にはしないというのは、信頼を大きく失う行為なのです。気をつけましょう。
リーダーに必要な資質2.支援する
リーダーは常にメンバーを支援しながらも、背中を押すことで成長するように支援し、何かあればセーフティネットになって守るという姿勢が大事です。
支援することでメンバーは挑戦をできますし、成長を促進することができます。
自分が前に出るのではなく、あくまで支援するという姿勢が大事な資質なのです。リーダーに必要な支援する方法を解説します。
メンバーを前に出す
リーダーに必要なのは、「メンバーを前に出す」ことです。
リーダーのあるべき姿としてよく言われるのが、背中を見せてメンバーがついてくるのを期待する、というものです。しかしこれは間違いです。
率先して仕事を行い引っ張ろうとするのですが、これはメンバーを信用していないから起こることです。そんなリーダーには誰もついていこうとはしません。
メンバーに積極的に仕事を任せることで成長させ、能力を引き出すこともリーダーの資質です。
メンバーが成功することはチームの成功であり、チームの成功こそリーダーの成功なのです。
メンバーとの垣根をなくす
メンバーを前に出すためにも、メンバーとの間に垣根が生まれないようにしましょう。
相談できる環境がないとメンバーは挑戦しづらいので、メンバーを前に出そうと思ったら、日頃から相談できる関係になっておきましょう。
普段からコミュニケーションを取るとともに、自分の弱さやありのままの姿で接して相談できる関係を築くというのも、リーダーの資質です。
質問をする
メンバーとの垣根がなくなり、前に出すことに成功したら、次に行うべきことはメンバーとのコミュニケーションをさらに緊密にするということです。
リーダーがメンバーと緊密な関係を築く時に利用すべきなのは、「問いかけ」です。
人間は自分に関心を寄せてくれる人に対して、お返しのように関心を寄せます。
問いかけをすることによって、こちらのことを知ってもらうことができるのです。
ちょうどいい難易度の仕事を任せる
メンバーに仕事を任せる時に気を付けないといけないことがあります。
いきなり難易度の高い仕事を任せるのでは、失敗する確率が高くなりますし、やる気をなくしてしまいます。
任せる領域としては、今の知識とスキルではできるが、ちょっと難しいレベルの仕事を依頼するのがよいです。
ある程度リスクがあり、挑戦が必要な仕事を任せるというのも、リーダーに求められる資質でしょう。
成果を評価する
仕事の成果をどのように評価するかも、大事なポイント。
成果をリーダーが取り上げるようなことをしてはいけません。成果を部下から奪うと、信頼感が損なわれますし、やる気が失われます。
成果が出た場合には、リーダーが手伝ったとしても部下の手柄とします。逆に、悪い成果が出た時にその責任をリーダーが負う、つまりそれだけの責任感もリーダーの資質です。
部下の失敗にリーダーが責任を持つことで、部下は挑戦ができますし、信頼をしてもらうことができます。
リーダーに必要な資質3.変容をもたらす
変化の激しい現代において、人に変容をもたらす力はリーダーの資質です。
変容がなければ、競合や環境が変わっているのに、自分だけが乗り遅れているという事態になってしまいます。
だからこそ、リーダーは事業だけでなく、個人に対しても変化を促していかなくてなりません。各個人が成長しなければ、事業を成長させることはできないからです。
変容をもたらす方法について、以下で解説します。
まずリーダーが変わる
「変われる」というのもリーダーの資質です。
人を変化させようとする場合、まず自分が変わらなければ相手は変わりません。
「変わろう」と言ってる人が何も変わる努力をしていないのに、部下が変わるわけないですよね。
変容をもたらすことは部下の幸福度も上げるので、より主体性を持つようになります。まずはお手本を見せるのもリーダーの務めなのです。
モチベーションを上げる
メンバーに刺激を与えアイデアを求めることで創造性を高め、モチベーションを高めるのもリーダーの資質です。
メンバーを変えるには、成長しよう・変化しようという意識を持たせることが大事ですが、そのためにはモチベーションを上げることが重要だからです。
上司対部下の関係ではなく、対個人として接することで一人ひとりの感情や欲求を知るのが大事です。
お金などの外的な報酬によってモチベーションを高めようとすると、創造的なモチベーションは下がってしまうという研究結果がありますので注意が必要です。
自己肯定感を高める
リーダーはメンバーの自己肯定感を高められるのが大事な資質になります。
「あなたの仕事によって助かっている」ということを伝えることで、メンバーは「もっと頑張ろう」とモチベーションを上げることができます。あなたも認められると、やる気になりませんか?
自己肯定感をもたらすことによって、メンバーは仕事にやりがいを持てて、さらに成長するのです。
社会全体のためになっている、会社全体のためになっている、という感謝を伝えることも、仕事の意義がわかりますし、効力感を高められます。
フィードバックをする
仕事や考え方に対してフィードバックを受けると、成長できるということが明らかになっています。
頻繁で具体的なフィードバックは、部下の満足感や仕事への没頭度合い、パフォーマンスを高めるという研究もあります。
さらに、長所に注目するリーダーのメンバーは、短所に注目するリーダーのメンバーよりも2倍仕事に没頭していた、という研究もあります。
つまり、よい点に注目し認めるフィードバックをできるのが、リーダーの資質なのです。
リーダーに必要な資質4.多様性を活かす
多様な人材がいる組織をうまく導くのも、リーダーに必須の資質です。
今後、企業では多くの外国人労働者が働くことになりますし、グローバル化に対応できなければ企業は生き残れないとも言われています。
お互いの違いを尊重しつつ、壁を越えて協力するように働きかけるリーダーが必要なのです。
成果を出し続けるチームというのは、人と人の多様性を認め合って、それぞれの能力を活かしているという研究結果もあります。多様性を活かす方法について解説します。
壁に対処する
リーダーは、組織内に生まれる壁に対処しなくてはいけません。組織内の壁とは、以下のものです。
- パワーの壁
- 男女の壁
- 年齢の壁
- 前例の壁
リーダーが強すぎるパワーを持っていると、メンバーとの間に壁が生まれます。それがメンバーとリーダーのコミュニケーションを阻害します。
男女の差や年齢の差も壁を作る原因となります。「男だからこう、女だからこう」「この世代はこう」という風に偏見を持つと、お互いの理解を邪魔します。
また、組織内では、前例や常識の壁が生まれがちです。これまでこうしてきたからこのやり方が正しい、こうあらねばならない、という思い込みは組織内に壁を作ってしまいます。
新しい意見も取り入れて、どんどん変えられるのがリーダーの資質でもあります。
良好な人間関係を築く
高すぎる壁を生み出すのを防ぐためには、良好な人間関係を築くのが有効です。
良好な人間関係によって、お互いを理解し、つながることで他者と自分の間に壁を作りづらくなります。
ここまで説明してきた「信頼を得る」「支援する姿勢」などの方法を使って、良い人間関係を築けるかどうかも必要な資質になります。
感謝する
感謝できることもリーダーの資質です。
多様なバックグラウンドを持った人間が団結するためには、「感謝すること」が有効と証明されています。人は感謝されると、内的モチベーションが上がり、パフォーマンスが上がります。
さらに人間は感謝されると、もっと良い行動を取るようになります。感謝をするチームでは、まわりの人を助ける割合が倍増したそうです。
感謝によって全員のモチベーションが高まり、他者との壁も生まれにくくなります。多様性については以下の記事でも解説しているので、参考にしてください。
リーダーになる前に知っておくべき組織の性質
リーダーになるための資質をクリアするだけでなく、リーダーは組織の習性を知っておくのもリーダーになるための資質です。
個人とは異なり、組織という集団だからこそ起こる現象があります。
それを知っておかなくては、チームを引っぱっていくときにうまくいかないことがあるので注意が必要です。
集団心理
リーダーは、「集団心理」を知る必要があります。
組織に入ると個人は変わります。個人それぞれのの性格がぼやけて、集団全体が持つ性格のようなものが生まれます。それが集団心理です。
そして、集団心理は会社の中で伝染していきます。チームのなかの一人でもリーダーに対して不信感を抱いたら、それはたちまち他の人にも伝染していきます。
いったん部下から「あの人はダメだ」と思われたら、それがチーム全員の総意になっていることがありえるのです。
集団心理の使い方
集団心理は、ポジティブな思考や良い習慣や考え方を伝染させればいいのです。
そうすればチーム全体が成長し、楽しく仕事ができますし、成果を上げやすくなります。
リーダーの振る舞いによってチーム全体にいい伝染を起こしましょう。日常的な感情や言動、表情や声のトーン、ボディランゲージに注意しましょう。
現状維持バイアス
1988年のボストン大学のウィリアム・サミュエルソン博士の研究などで明らかになっていますが、人には「新しい選択肢を回避する傾向」「未知なもの、未体験のものを受け入れたくないと感じ、現状のままでいたい」心理作用があります。
これは「現状維持バイアス」と呼ばれますが、組織においてもよく見ることができます。
例えば、会社の方針が変わったり、新しい事業に参入したりする時に、必ずと言っていいほど文句をいったり、ネガティブな意見を述べる人が出てきます。
人は変化を恐れるということを知っておかなくては、思わぬ摩擦を生んでしまうことになります。
リーダーになるための行動を起こそう
ここまで、優れたリーダーになるための資質とそれを身につける方法を解説してきました。
ただし、これらの知識をただ取り入れるだけでは意味がなく、とにかく実践することが大事です。
知識は取り入れるだけでなく、行動することによって自分自身や環境を変えることができます。ぜひ良いリーダーになるために取り入れてみてください。
今回紹介したリーダーの資質は、以下の書籍の研究を参考にしています。どちらも神書籍なので、ぜひ読んでみてください!
ちなみに、以下の記事ではダメ上司の特徴と対策方法を解説しています。このようなリーダーにならないように気を付けてくださいね。