部下に対して、どうやってフィードバックを行えばいいかがわからない、という管理職の人も多いのではないでしょうか?
フィードバックの必要性をわかっている人が少ないですし、部下に嫌われる可能性があるので、フィードバックは上司が避けがちなポイントでもあります。
しかし、フィードバックがなければ部下は悪い所に気づきませんし、部下は大きく成長をすることができません。上司は、必ずフィードバックをする必要があるのです。
ここでは、心理学などでわかっていることを元に、なぜ上司がフィードバックをしなくてはいけないのか、どのようにフィードバックを行うべきなのかを解説します。
フィードバックの重要性
フィードバックはなぜ重要なのでしょうか?
ふだん部下に仕事を教えるときには、まずは簡単な仕事から教えると思います。その仕事ができるようになったら、もう少し難しい仕事を依頼しているのではないでしょうか?
もちろんこの方法は正しいのですが、根本から仕事への取り組む方を変えることはできませんし、本当に成果を出せる人材になることはできません。
部下が変化し成長するためには、難しい大きな仕事に自分からチャレンジしなければなりません。難しい仕事に挑戦するからこそ、大きく成長ができます。
このような難易度の高い仕事を達成するのに必要なのが、「フィードバック」です。時間がかかる難易度の高い仕事においては、途中で適切なアドバイスやサポートを行うことで、部下は挫けずに大きな仕事を達成することができます。
つまり、部下の成長と変化のためにフィードバックが必要なのです。
フィードバックの効果
フィードバックには、どのような効果があるのでしょうか?
フィードバックによって、部下の学習意欲を高められ、部下の満足感や仕事への没頭度、パフォーマンスを高めることが実証されています。この理由としては、頻度の高い具体的なフィードバックは、安心して働けるチームであるという心理的安全性を築くことができるからです。
また、フィードバックによって部下が成長するので、業績が上がることも予想できます。
フィードバックの方法
では、上司が部下にフィードバックを行う時の方法、注意すべきポイントを解説していきます。
ゴールを示す
上司の役割には、チームや事業のゴールを明確に示すということがあります。
ゴールはチームの目的でもありますが、部下の目的とつながるものにしておくことで、部下が自発的に動くようになります。
自発的に動くようになれば、成長へのモチベーションが湧くので、フィードバックを積極的に受け入れるようになります。
長所に注目する
人の長所に注目してフィードバックを行う上司の場合には、部下の67%が仕事に没頭していたのに対し、短所に注目する上司の場合には31%だったというデータがあります。
つまり、上司が長所に注目してフィードバックをすると、部下は2倍のやる気を出すのです。
フィードバックを行う時には、部下の長所をメインに見て、そこを褒めながらフィードバックを行いましょう。
表彰をする
IBM Work Trendsが19000人の従業員を調査したところ、表彰を受けた従業員の仕事の没頭レベルは、3倍も高いということがわかっています。
さらに表彰などで部下をしっかりと認めると、仕事上の幸福感が増すという調査結果もあります。
つまり、表彰やメンバーの前で褒めるなどのフィードバックを与えることで、仕事に没頭するだけでなく幸福感も増し、ますます仕事に打ち込むという好循環を生み出すことができるのです。
聞き入れてもらう工夫する
フィードバックの内容は、部下にとっては耳の痛いことかもしれません。
上司は言いにくいことを言ってあげるのが仕事と思っているかもしれませんが、相手がその意見を受け入れなければ意味がありませんよね。
そこで重要になるのが話し方です。相手の立場に立って、部下の関心事から話し、褒めて気分を良くし、失敗を話して共感や信頼性を作り、部下が意見を聞き入れるような姿勢に変化させるのです。
肯定、意見、肯定のように褒めたり肯定的な話で意見をはさむのも有効ですので、こういった工夫をしましょう。
部下からフィードバックをもらう
フィードバックは自分が部下にするだけでなく、部下からもフィードバックをもらうようにしましょう。
部下というのは上司を陰で評価しているものです。ただ、それが陰で言われている不満であれば、何の生産性もないです。
上司は部下からの意見やフィードバックをもらうことで、成長することができますし、部下のガス抜きにもなります。まずは上司が身を挺して、フィードを受け入れる姿勢を見せましょう。
部下が上司にフィードバックするというのは抵抗があると思います。そこで、部下が話しても大丈夫だと思える部下との信頼関係を作らなくてはなりません。
普段からコミュニケーションを取ったり、部下の相談に乗ったりと信頼関係を作りましょう。
正論は避ける
よくある上司のフィードバックの誤りは、「正論を振りかざす」というものです。
人は論理ではなく、感情で動く生き物です。いくら正論で正しいことを言っても、部下は表面上は納得したようでも腹のなかは別のことを考えています。
正論を振りかざして部下を論破すれば爽快かもしれないですが、部下は心を閉ざしフィードバックを聞き入れることはないでしょう。正論は避けるようにしましょう。
主観の意見で話す
上司がフィードバックを行う時には、「私は~と思う」という主観的な言葉で話すようにしましょう。
「あなたはここを直したほうがいい」など、意見の主体をあいまいにすると、フィードバックが厳しいものになります。すべての人がそう思っているように聞こえます。
これでは部下は萎縮してしまうし、意見を聞き入れる気持ちがなくなってしまいます。
フィードバックを伝える時には、「私は」という言葉で主体を明確にするようにしましょう。それであれば、あくまで自分ひとりが感じたことを述べているだけなので、相手も聞き入れやすくなります。
その場だけを評価する
よくあるフィードバックに、「あなたはいつもこうしているが、これはやめた方がいい」というような言い方があります。
しかし、このような言い方をしてしまうと、部下のすべてを否定してしまうことになります。
たまたまその日だけのことなのに、毎回のように言われたら部下は反論したくなりますし、フィードバックを聞かないでしょう。
ですので、上司は「今日の〇〇は」「今回の〇〇は」のように、その場だけの評価をするようにしましょう。決して、いつもそうだという言い方をしてはなりません。
ステレオタイプにあてはめない
頭の凝り固まった人に多いのですが、相手をステレオタイプに当てはめてフィードバックをする人がいます。
「ゆとり世代だから」とか「女性だから」「関西出身だから」「内向的だから」などのように決めつけてフィードバックをするのです。
こういった決めつけは根拠がないですし、状況や環境のことなので、相手も改善しようがありません。
このようなフィードバックは相手を傷つけることにもなり、上司への反感を生みますのでやめましょう。
改善策を提示する
フィードバックをする時には、必ず改善策を提示しましょう。
フィードバックの目的とは、問題点を解決することです。批判だけしても改善策がわからなければ、行動にも移せませんし、結局事態はよくなりません。
部下がどうやって問題を解決すればいいかの具体的な解決策を教えてあげるのが、上司の役割なのです。
決して根性論や精神論で、「根性が足りない」「やる気が足りない」とかいって責めるのは上司の能力不足を露呈することになるのでやめましょう。
フィードバックのタイミングを工夫する
フィードバックは、内容もさることながら、行うタイミングも重要です。
基本的に相手が疲れている時や余裕がないとき、落ち込んでいる時にフィードバックを行うのはやめましょう。また行動の直後というのもやめましょう。
自分のなかで見直した後に、フィードバック行ったほうが成果が出やすいとわかっています。
例えば、プレゼンの直後にフィードバックを行うのではなく、自分のなかで内省してからフィードバックを受けるほうがよいのです。
また、フィードバックは食後に行うようにしましょう。人は食前の血糖値が下がったタイミングだと、イライラしたり意見を聞きにくくなっています。
血糖値が上がってからの方が、意見を聞きやすくなります。フィードバックを行うのは、食後30分以降を狙うようにしましょう。
プロセスも評価する
悪い上司の条件として、「結果主義」があげられます。「ビジネスは結果がすべてだ。結果を出さなければ評価しない」と、プロセスを評価しない上司からは部下の心は離れていきます。
もちろん、プロセスだけあって結果が出なくていいわけではありません。ただ、プロセスを認めることで部下はモチベーションを上げられますし、それを糧に成長できます。
さらに、努力を認められた人は意思の強さや打たれ強さが育まれ、長期的にはパフォーマンスが向上することがわかっています。結果がすべてといって部下を評価しない上司は、部下を育てられるチャンスを自分の言動から逃しているのです。
上司は、「こういう結果になってしまったけど、この部分の努力は良かった」と認めるようにしましょう。
BYAFメソッドを使う
承諾誘導のテクニックに「BYAFメソッド」というものがあります。
これは、「But You Are Free(ですが、あなたの自由です)」の頭文字を取ったものなのですが、部下にフィードバックをした後にこれを付けるというテクニックです。
人は、強制されると反発したくなります。あなたもそんな経験があると思います。
逆に、自分の自由にしていいと言われると、相手に従ってもいいと思うのです。部下へのフィードバックの最後には、部下自身で選択できる余地を残しておきましょう。
フィードバックはなぜ嫌われる?
上司は、部下にフィードバックをすることを嫌う傾向があります。
アメリカでは、上司の8割がフィードバックが苦手と考えているそうです。なぜフィードバックは苦手と思われるのでしょうか?
まず、フィードバックは部下から批判のようにとらえられてしまう、ということがあります。「ここを直した方がいい」「別のやり方にした方がいい」など、フィードバックをしても部下は批判ととらえて、嫌がられる可能性があるのです。
嫌がられることを避けるためには、フィードバックを行っている意味を説明したり、ふだんからコミュニケーションを取ったり、部下との間で信頼を築く必要があります。
また、上司の仕事は部下をフィードバックによって成長へと導くことです。嫌われることを恐れないで、フィードバックを行うようにしましょう。
まとめ
上司が部下に対して行うフィードバックの重要性や効果、方法を解説してきました。
フィードバックによって部下を成長させることができますし、チームや組織をよくしていくことができます。
ただ、部下との信頼関係がなければフィードバックを受け入れてもらうことはできません。上司は部下から信頼されるリーダーとしての資質を身につけましょう。
上司は避けたくなってしまうかもしれませんが、さぼらず部下にしっかりとフィードバックをしていくようにしましょう。フィードバックによって、長期的には将来の会社の収益が大きく変わっているかもしれません。