従業員のメンタルの不調を改善する7つの方法【ポジティブ心理学を活用】

メンタルの不調というのは、仕事や人生に対して大きなマイナスを及ぼします。放置していると、うつ病や重大なメンタル疾患を起こしてしまいますし、最悪命の危険もあります。

だからこそ、メンタルの不調は早めに見つけて改善しなければなりません。ここでは、メンタルの不調の見つけ方やメンタルの不調の兆候、不調の改善の方法を紹介します。

心理学ではたくさんの研究によって、メンタルの不調を改善する方法が実証されています。この方法を学ぶことで、自身のメンタルを改善するだけでなく、従業員全体のメンタルを改善することができます。

私自身、ここで紹介する方法を利用することで、以前はかなりストレスを受けやすく落ち込みやすかったのですが、かなりメンタルが改善されたと感じています。

もちろん、メンタルの不調が100%改善できるというわけではありませんが、一定の効果があるのは確かなので、試してみるのは有用だと思います。

メンタルの不調の初期症状

メンタルの不調はどうやって見つければいいのでしょうか?自分のメンタルが悪化していないと思っていたけど、すでに抑うつだったということはよくあります。

そんな状態になってしまうと、改善するのに時間がたくさんかかってしまいます。だからこそ、早期発見が重要なのです。

まず、メンタルの不調の兆候を紹介します。厚生労働省から委託されて一般社団法人日本産業カウンセラー協会が運営しているサイト「こころの耳」や厚生労働省のサイトを参考に掲載します。

こういった兆候が10日以上続く場合には、早めに改善の方法を試してみましょう。経営者や職場の上司、人事などは、こういった初期症状がないかをしっかりとチェックしなくてはなりません。

身体面での初期症状

身体的なメンタルの不調
メンタルに不調を及ぼすと、身体に様々な異変を及ぼします。

上のような身体的な自覚症状が続く場合には、メンタルヘルスに問題が起こっている可能性があります。

  • 睡眠:朝早く目が覚めてしまう。夜中に何度も目が覚める。寝つきが悪い。熟睡できない。
  • 食欲・体重:食欲が湧かない。食べてもおいしくない。食欲が急に増えた。体重が減った。または増えた。
  • 疲労:朝からぐったりと疲れきっている。疲労感がぬけない。
  • 体の変化:頭が重い。肩・首が重い。下痢や便秘が続く。




心理面での初期症状

心理面での不調
メンタルヘルスに不調を起こすと、自分の心理面に影響があります。憂鬱、無気力、不安という気持ちが強く心理をむしばむことになります。

自分の日頃考えていることを見直すことで、こういった傾向がないかチェックしましょう。

  • 憂うつ感:気分が落ち込んでいる。何事にも悲観的になる。憂うつだ。
  • おっくう感:何事にも興味がもてない。何をするにもおっくうだ。元気が出ない。
  • 焦り、不安感:イライラして落ち着きがない。不安だ。

行動面での初期症状

メンタルヘルスに不調を及ぼすと、行動にも異変が起こります。どの行動も注意散漫、否定的、ネガティブという傾向があります。

  • 遅刻・欠勤:会社に遅刻することが増える。欠勤することが増える。会社に行きたがらない。
  • 仕事:ミスや物忘れが増える。ぼんやりしていることが多くなる。
  • 会話:口数が減る。「自分はだめな人間だ」など否定的な発言が増える。
  • 日常生活:新聞やテレビを見なくなる。人との接触を避け、一人になりたがる。服装が乱れてくる。表情が暗くなった。

ここまでは、メンタルの不調の初期症状を掲載してきました。従業員に自己申告で書いてもらったり、管理職がチェックをするなどして、従業員がメンタルに不調を起こしていないかをしっかりと把握しておきましょう。

もしメンタルに不調を起こしている従業員がいたら、早めにケアしなくてはいけませんし、メンタルに不調を起こしていなかったとしても、日頃から予防をしておくことは有効です。

以下でメンタルを改善する方法、メンタルの不調を予防する方法を解説しますので、ぜひ社内で利用してみてください。

【科学で実証済み】メンタルを改善する方法

ここでは、メンタルの不調を改善する方法として、「ポジティブ心理学」を利用します。

ポジティブ心理学とは

ポジティブ心理学とは、ペンシルベニア大学心理学部教授であり、アメリカ心理学会の会長にも選出されたことのあるマーティン・セリグマン博士によって創設された心理学です。

ポジティブ心理学は、メンタルヘルスを改善するために有効と証明されています。ポジティブ心理学のエクササイズによって、抑うつや多くの人のメンタルが改善したというデータがあるのです。

「ポジティブ心理学」という名前からは、あなたはただポジティブな思考をすべきというようなイメージを持つかもしれませんが、実際は全く異なります。

ポジティブ心理学とは、持続的幸福度を高めることを目標として、よい生き方を実現するためのあらゆる方法の研究のことです。そのなかには、ポジティブな感情以外にも達成感や意味・意義、エンゲージメントなどの要素も利用します。

そして、ポジティブ心理学のエクササイズを行うことで、持続的幸福度が高まり、メンタルの状態が回復するのです。以下より、メンタルの不調を改善効果のあるポジティブ心理学のエクササイズを紹介していきます。

メンタル改善方法1.よいこと日記をつける

よいこと日記
一日でうまくいったことを書く「よいこと日記」をつけるのが効果的です。毎日その日にうまくいったことを3つ書き出し、それらがなぜうまくいったのかを書きます。

例えば、「今日のタスクを計画通りにできた」「それは細かく時間を測ったから」などのように、上手くいったこととその理由を書き出してみるのです。これによって幸福度が上がり抑うつ傾向が下がったということです。

ほんとにそんな簡単なことでメンタルが改善されるのか、って?たしかにびっくりするほど簡単な作業ですよね。でも、これは以下のような理由があるのです。

人は危険を避けて生き残るために、本能的に悪い出来事に注意を向けるようにできています。だからこそ、出来事のネガティブな面に注目したり、ネガティブな方向に考えてしまう傾向があります。

放っておくと、なんてことない出来事も悪くとらえてしまい、これがどんどんメンタルを悪化させてしまいます。だからこそ、うまくいったことについて考えるスキルを訓練しなくてはならないのです。

会社でこれを活用するには、日報内に1日でうまくいったことを書く、一日の最後に報告するなどが考えられます。





メンタル改善方法2.強みを把握する

人は自分について、ネガティブな人物像であると思い込むことがあります。ですが、本当の自分というのは、自分で思い込んでいる自分とは異なります。

そこで、自分がどういう人間なのか、どんな特徴があってどんな強みがあるのかを客観的に把握しなくてはなりません。自分の強みや特徴がわかったら、それらを活用することで喜びや活力、熱意を得られ、メンタルが改善します。

自分の強みを知るために便利なのは、「VIA・強みテスト」です。このテストは、ミシガン大学教授のクリス・ピーターソンによって開発され、100万人以上が受検しています。

テストによって、自分の「特徴的強み」がわかります。特徴的強みとは、活用することで喜びや活力、熱意を感じるような自分の強みであり、アイデンティティにもなりうるものです。

上のテストは英語のサイトなので、言語選択で日本語を選べば翻訳版のテストが受けられます。翻訳が変なのが気になる人は、こちらのグッドポイント診断を受けてみてください。

これは、リクルートキャリアのノウハウで作成された診断であり、VIA・強みテストよりも多い項目に回答することで、自分の強みが5つまでわかります。

メンタル改善方法3.強みを活用する

テストを受けて分析結果が出たら、エクササイズとして自宅や職場において、自分自身の強みの上位5つの強みを活かしてみます。

例えば、強みが「創造性」の場合には、1日に10分必ずクリエイティブなアイデアを考えてみる、強みが「自己コントロール」であれば毎日決まった時間運動をしてみる、などの行動を行います。

このようにして、自分の強みをうまく活用できればメンタルの状態が改善していくことがわかっています。このエクササイズの後3か月後には、抑うつ度も顕著に下がったそうです。

会社では、従業員全員にこのテストを受けてもらい、自身の強みを活用できるような体制を作るのがよいでしょう。

メンタル改善方法4.怒りや恨みを解消する

抑うつなどのようにメンタルを悪化させるものとして、怒りや恨みがあります。怒りや恨みを何度も反芻して思い出し、怒りや恨みにしがみつくことで、メンタルの状態は悪化していきます。

だからこそ、怒りや恨みの感情を書き出して、それがどのようにメンタルに影響を与えているかを書き出しましょう。そして、書き出したあとには、その感情をニュートラルな感情に変えなくてはいけません。

そのためには、怒りや恨みの原因に対して、「ゆるしの手紙」を書いて、相手の罪やそれに関連した感情を説明し、相手を許しましょう。

これによって、怒りや恨みに固執していた思考が修正され、メンタルが改善することになります。

メンタル改善方法5.感謝を伝える

これまでに感謝を伝えたことがない人に対して、感謝を伝えます。手紙を書いて、それを相手に直接届けたり、声に出して読むのです。

セリグマン博士の研究によると、感謝の手紙を書き、それを読み上げて相手に伝えることで、幸せに感じ、落ち込むことが少なくなった研究データがあります。

感謝を伝えることで、抑うつ傾向が軽減しますし、人生の満足度を上げることができるのです。

会社内でも「感謝」は利用できます。「サンクスカード」を導入する、表彰システムを作るなど、感謝を伝える機会を作ることで従業員のメンタルを改善することができます。





メンタル改善方法6.追求者ではなく満足者になる

笑顔と怒り顔
「追求者(マキシマイザー)」ではなく「満足者(サティスファイザー)」になるというのも、メンタルを改善する方法です。

  • 満足者=「これくらいで十分だ」と最低限の条件を満たすものを選んで満足する人
  • 追求者=「完璧でなくてはならない」と諸々の条件を極限まで追求して選ばないと気が済まない人

追求者になってしまうと、いつまでたっても人生に満足することができず、メンタルが不調に陥り、改善できません。

満足者になるためには、自分の満足度を向上させる方法を再確認し、満足できるための方法を立てましょう。

メンタル改善方法7.積極的-建設的反応

メンタルを悪化させるのは、対人コミュニケーションによる影響が大きい。人からのネガティブな反応が自身のメンタルに影響を及ぼすのです。

だからこそ、相手との関係を築く方法を学んでおくと、メンタルを改善することができるといえます。

相手との関係を築く方法としては、「積極的-建設的反応」というものがあります。これは、相手の発言に対して注意深く耳を傾け、積極的に建設的に反応する方法です。

例えば、「クライアントから感謝された」という発言があったら、「それはすごい!どんなことをして感謝されたんですか?何があってどう対応したんですか?今はどんな気持ち?」などのように、積極的かつポジティブに反応をするのです。

これが、「それはよかったですね」とか「その感謝が続くかどうかが大事ですね」などのように、受動的だったり、ネガティブな反応というのは、相手との関係を悪くしてメンタルにも悪影響を及ぼします。

積極的かつ建設的な反応ができるように、練習をしましょう。

また、社内のコミュニケーションを「積極的-建設的反応」にすることで、従業員全員のメンタルが改善するでしょう。

ポジティブ心理学で業績も改善できる

おもしろいデータがあります。

ポジティブな発言対ネガティブな発言の比率が2.9:1を上回る会社では、経営状態が良好であり、その比率を下回る会社では悪化していたのです。

そして、ポジティビティが多すぎるのはマイナスであり、ポジティブな比率が13:1を上回る場合には、業績がよくなかったそうです。

つまり、基本的に社内のコミュニケーションは、ポジティブなものでなくてはなりませんし、建設的-積極的反応によるものでなくてはなりません。

コミュニケーションがネガティブなものになると、社員のメンタルが悪化するだけでなく業績も下がってしまうのです。

まとめ

もちろん、私は医師ではありませんので、今回の方法で確実に成果が出るとは限りません。

ですが、心理学の研究によって、その効果はかなり証明されているので、一定の効果は期待できるのではないかと思います。

経営者の方や人事担当者の方は、従業員のメンタルヘルス改善・予防のためにも、ポジティブ心理学を利用してみてはいかがでしょうか?

今回紹介した方法は、以下の本を参考に書いていますので、詳しく知りたい人は読んでみてください。人生をよりよく生きるための方法が書かれていますよ。

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