企業の採用では多様性が大事だが、ダイバーシティ採用には注意

ダイバーシティ採用 メリット人材

企業にとって採用は重要

企業にとって採用はとても重要です。事業を行うのは人間ですし、業績をもたらすのも人間です。どのような人材を採用するかによって企業の存続性、将来性が変わってきます。

基本的に優秀な人材を採用するのが大事なのですが、優秀な人材だからといって、考えなしに色んな人を採用していたら、組織にとってマイナス影響を及ぼすことがあると明らかになっています。

大きな組織になってくると、たくさんの人間を採用することになります。その場合には、人材のバランスや多様性を考えなくては、うまく組織が回らないということになってしまうのです。

ここでは、企業が採用を行うときに多様性を考えるべきである理由と、ダイバーシティ採用基準の考え方を紹介します。

多様性のメリットとは?

企業がダイバーシティ採用を行うのは、メリットがあるからです。ダイバーシティ採用のメリットとは多様性です。多様性が業績や組織パフォーマンスにプラスの効果をもたらすのです。

アイデアやイノベーションとは、複数の情報の組み合わせによって生まれるものです。ひとつの企業に様々な情報が集まることで多様性がうまれ、それらが相互に影響を及ぼすことで、企業内に新しいアイデアやイノベーションを起こすことができるのです。

今日では、そのようなイノベーションが企業の将来を決めるともいわれており、多くの企業が日夜試行錯誤を行っています。だからこそ、多様性にはメリットがあるのです。

しかし、昨今言われている「ダイバーシティ採用」のようにただただ多様性を追い求めるのは、逆にマイナスの影響を生み出すので注意が必要です。一般的に言われているダイバーシティ採用はなにが問題なのでしょうか?ダイバーシティ採用の意味から解説していきます。

ダイバーシティ採用とは?

ダイバーシティ(Diversity)とは、直訳すると「多様性」という意味です。経営や採用に関して使われる際には、「ダイバーシティ経営」や「ダイバーシティ採用」というように「人の多様性」を活かした経営や採用という意味で使われます。

性別や人種、国籍、宗教、年齢、学歴、職歴などの多様さを社内に取り入れ、企業の競争力につなげるというものです。そして「ダイバーシティ採用」とは、女性や外国人などの採用をしていくことで、組織の活性化を図ることも表します。

多くの大手企業もダイバーシティ採用を進めており、一般的にこのようなダイバーシティ採用は業績に好影響を及ぼすと考えられています。

経営学におけるダイバーシティ採用

しかし経営学での研究によると、ダイバーシティ採用というのは、必ずしも企業の業績に良い影響を与えるわけではないと明かされているのです。

むしろ、「性別・国籍などを多様化することは、組織のパフォーマンス向上によい影響を及ぼさないばかりか、むしろマイナスの影響を与える」と、ダイバーシティ採用にはマイナスの影響がある可能性が述べられています。

ダイバーシティの種類

経営学の研究では、ダイバーシティには2つの種類があるとされています。それは、「タスク型のダイバーシティ」と「デモグラフィー型のダイバーシティ」です。

「タスク型のダイバーシティ」とは、業務に必要な能力や経験の多様性のこと。例えば、そのチームのメンバーがどのような教育を受けたか、様々な職歴、多様な経験を持っているかということです。そして「デモグラフィー型のダイバーシティ」とは、性別や国籍、年齢などの目に見える属性のことです。

これらタスク型のダイバーシティとデモグラフィー型のダイバーシティは、組織に異なるパフォーマンスをもたらすということがわかったのです。

ここでは、『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』で紹介されている内容より、米イリノイ大学のアバーナ・ジョシとヒュンタク・ローが2009年に発表した論文(注1)と、米セント・トーマス大学のスジン・ホーウィッツらが2007年に発表した論文(注2)をもとに解説します。

(注1)Joshi A.& Roh,H.2009.The Role of Context in Work Team Diversity Research: A Meta Analytic Review.Academy of Management Journal,vol.52:599–627.
(注2)Horwitz, S & Horwitz,I.2007.The Effects of Team Diversity on Team Outcomes:A Meta Analytic Review of Team Demography.Journal of Management,vol.33:9871015.

能力・経験の多様性

これらの研究の両方において、「タスク型のダイバーティ、つまり能力・経験の多様性は、組織パフォーマンスにプラスの効果をもたらす」という結果になりました。

平たく言えば、「色んなバックグラウンドを持った人を採用した方が業績にプラスになる」ということです。なぜこのような結果になるのでしょうか?経営学者たちは次のように分析しています。

多様な経験や職歴の人が持っているあらゆる「知」が集まることで、新しいアイデアや解決策が生まれる。タスク型のダイバーシティによって「知の多様性」が生まれ、それにより業績が上がる傾向にあるというのです。

つまり、バラエティに富んだ人がいることで、それらの経験や知識がミックスされ新しいアイデアが生まれ、業績がよくなるということです。

多様な経験や職歴の人を採用することで、このようなプラスの効果が生まれるのです。

性別・国籍の多様性

ダイバーシティ
一方、「デモグラフィー型のダイバーシティ」つまり、性別や国籍や年齢などが異なる多様性は、注1の研究では「組織パフォーマンスには影響を及ぼさない」、注2の研究では「むしろ組織にマイナスの効果をもたらす」という結果になりました。

なぜこのような結果になるかというのが説明されていますが、『組織のメンバーにデモグラフィー上の違いがあると、同じデモグラフィーを持つメンバーと、そうではないメンバーを「分類」する心理的な作用がどうしても働き、同じデモグラフィーを持つ人との交流だけが深まります。結果として「組織内グループ」ができがちになってしまいます。』

このように組織においてデモグラフィー上の違いがあると、それぞれのデモグラフィーでグループを形成し、グループ同士の対立が生まれてしまうのです。それによって、業績がマイナスになる可能性があるのです。

このように、性別や国籍、年齢などの多様性は、グループごとの対立を生み、組織の業績に対して効果がないどころか、マイナスの影響まで及ぼす可能性があるのです。

企業の多様性への採用基準

企業の業績を上げるような重要な影響を及ぼすのは「能力・経験の多様性」であり、「性別・国籍の多様性」というのは会社にとってマイナス影響を与える可能性があると述べてきました。

ですので、現代の企業が進めているように、盲目的に女性を採用したり外国人を採用するというのは、マイナスの影響を及ぼす影響があるのです。

もちろん、女性や外国人の方も様々な経験や教育バックグラウンドがあるので、タスク型のダイバーシティの効果があり、業績にプラスに働いている面もあるはずです。しかし、業績にマイナスになるということは、デモグラフィー型のダイバーシティのマイナスの影響が大きいと考えられるのです。

ダイバーシティ採用で採用すべき人とは?

基本的に企業が採用するときには、能力・経験の多様性を持った人を採用すべきで、性別・国籍の多様性を持った人というのはマイナスの影響もあると述べました。

しかし、どうしても国籍・性別が異なるダイバーシティ採用を行わなくてはならない場合もあると思います。デモグラフィー採用についての研究では、国籍や性別が異なる人材を採用する場合にも、どのような人材を採用すべきかについて明らかになっています。

性別・国籍のダイバーシティ研究

それは、1998年の加ブリティッシュ・コロンビア大学ドラ・ロウらによる「フォルトライン理論」によって研究されています。この理論では、人のダイバーシティにも複数の次元がある点に注目します。

複数グループの「性別、人種、年齢層」に共通項を持ってしまうと、グループ間の次元、つまり階層が小さくなり、それぞれのメンバーが固まりがちになってしまいます。それによって、組織内に境界線(フォルトライン)が出来てしまうというのです。簡単にいうと共通点がある人だと、グループを作ってしまい、別のグループの人とのコミュニケーションが進まないということです。

一方、「性別、人種、年齢層」に共通項がない場合には、複数の次元・階層が入りこむので組織間の境界線(フォルトライン)が生まれず、組織内のコミュニケーションがスムーズになるのです。

性別・国籍の異なる採用基準

例えば、30代男性がほとんどの日本の会社に、30代の日本人女性を複数人採用するのでは、次元が少なくなっていまい境界線が生まれ、それらの人同士が固まりがちになってしまいます。

ところが、30代の欧米人女性、40代のアジア人女性、50代の日本人女性などという風に、複数次元が生まれる人材を採用すると境界線が生まれません。それによって、グループが作られることなく、その分コミュニケーションが円滑になり、業績にもいい効果を及ぼすのです。

もしダイバーシティ採用をする際には、複数次元を生む人材を採用するようにしましょう。

まとめ

この記事では、ダイバーシティ採用について明かされている研究結果を元に、現代の企業のダイバーシティ採用はどのように行えばいいか、ということを考えてきました。

企業のダイバーシティ採用でのポイントをまとめると、以下となります。

  • 教育や職歴、経験が異なる人材を採用するのがよい
  • 人種や性別、年齢においても異なるような人材を採用する場合には、共通項を持たない複数次元を生む人材を採用すべき

もし企業の人材採用の担当者だったり面接をするような立場の人は、どのような人材を採用するかを決める時に、このようなダイバーシティ採用の研究結果を知っておくことも重要だと思います。採用というのは、企業の将来を決めるポイントです。ぜひこの最新の経営学を活かしていきましょう。

今回は以下の書籍を参考にしています。とてもためになるので、ぜひ読んでみてくださいね!

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