近年では、既存の仕事がAIに奪われるともいわれています。それに伴って、人間にしかできない独創的な仕事ができるクリエイティブな人材の採用が急務と考えられています。
ここでは、クリエイティブな人材を採用するためのポイントをひとつ紹介します。
クリエイティブな人材とは?
クリエイティブな人材とは、独創的なアイデアによって、革新的な仕事をなす人材のことです。例えば、iPhoneを生み出したスティーブ・ジョブズやGoogleの創業者のラリー・ペイジなどが現代では代表的でしょう。
このような創業者でなくても、社員のアイデアによって革新的な商品が生まれたという例は多くあります。すぐに思い浮かぶ例としては、マイクロソフトのXbox、ゼロックスのレーザープリンターなどが挙げられます。
変化の激しい現代では、企業が利益を生み出すのには、独創的な視点で新しいアイデアを作れるクリエイティブな人材が必要です。では、このような独創的でクリエイティブな人材を採用したい時には、どうやって人材を探せばよいのでしょうか?
ここでは、ペンシルベニア大学ウォートン校の終身教授アダム・グラント著の『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』を元に、クリエイティブ人材を採用する汎用的な方法を解説します。
弟や妹がクリエイティブであるという研究
まず、独創的なアイデアを生み出すクリエイティブな人材とは、リスクを取るというのが特徴です。
というのも、独創的なアイデアというのは、それまでの常識を覆すことになるので、成功するかが定かではないからです。周囲からの反対を受けるというリスクもあります。クリエイティブな人材というのは、リスクを避けることなく独創的なことを成し遂げるのです。
この本では多くの研究を元に、独創的なことを実現するクリエイティブな人材を見分ける要素が紹介されています。それは「あと生まれ」であるということ。つまり、「妹や弟であること」です。
これを知ると「ええ?本当に?」と思いますよね。まずは、その根拠となる研究を紹介します。
盗塁数の研究
野球において、盗塁というのはリスクの高い行為です。今のベースにいればアウトになる可能性はないのに、次のベースを狙うというのはアウトのリスクがあるからです。アウトのリスクはありますが、もし成功すれば大きなチャンスをチームにもたらすのが盗塁なのです。
科学史家であるフランク・サロウェイと心理学者のリチャード・ズワイゲンハフトは、メジャー・リーグにおける盗塁数の調査を行いました。この調査では、兄弟ともにプロ野球選手として活動する400人以上を調べました。遺伝子の半分を共有していて、同じ過程で育ち、同じような子供時代を過ごした兄弟を調べたのです。
この調査の結果、弟が盗塁を試みる可能性は、兄に比べて10.6倍も高かったのです。そして、盗塁の成功率が兄よりも3.2倍高かったのです。そして、メジャー・リーグで盗塁が多い選手のデータでも同じ傾向が出ています。2つの異なるシーズンで70回以上盗塁をした10人のうち、7人には兄か姉がいたのです。
もちろん、これは盗塁の数なので、選手として優秀かというと話は別です。盗塁というリスクのある行為を、弟が取る傾向があったということを示すデータなのです。
科学者の研究
前述のサロウェイは、科学における大発見に対してどのような態度をとるかを研究しました。その研究では、4000人ほどの科学者が「主流になっている見解を極端に支持する保守的な立場」から「新しいアイデアを極端に支持する革新的な立場」の間のどの位置に該当するかを、100人以上の科学史家に評価してもらっています(第一子とあと生まれの人数や家族規模、社会的階級などは調整されています)。
これによると、「あと生まれの科学者は第一子の科学者よりも、ニュートンの万有引力の法則や運動の法則、アインシュタインの特殊相対性理論が極論と見なされていた時代であっても、支持する確率が3倍以上だった」のです。
さらに、「地球が太陽の回らいを回っているという地動説をコペルニクスが公開してから半世紀のあいだは、あと生まれの科学者がコペルニクスを支持する確率は、第一子に比べて5.4倍高かった」のです。
ダーウィンの進化論に対しての研究でも、「ダーウィンが進化論を発表する前では、あと生まれの科学者の117人中、56人が進化の存在を信じていたが、第一子の科学者では103人中わずか9人であった」そうです。明晰な頭脳を持つ科学者においても、あと生まれの人の方が革新的な発見を擁護する傾向があったのです。
弟や妹がクリエイティブである理由
ここまで見てきたように、あと生まれの子はリスクを冒すことや独創的なアイデアを取り入れることに寛容です。このような研究から、クリエイティブな人材を採用したいときには、弟や妹であるあと生まれの人材を採用するのがよいかもしれません。
では、なぜ弟や妹などのあと生まれの人材は、このような特徴を持ったのでしょうか?これには、2つの説によって理由が考えられています。
兄弟間の競争
1つ目は、アドラーが提唱した兄弟間の「ニッチ(ふさわしい地位・仕事)」によるものです。第一子は一人っ子として育つため、当初は親の関心を一身に受けます。しかし、下に兄弟ができると「権力の座を追われる」という危機感を抱くようになり、弟や妹に対して権力をふるった結果、弟や妹が反抗的になりリスクを冒すというものです。
そして、第一子に対抗するのですが、第一子に勝つには同じ分野で競っても体力的にも知力的にも勝つことは難しいです。だからこそ、違う方法で差をつけることを選びます。
責任重大なことや優等生というポジションは、第一子に取られているので、弟や妹はリスクを取って別のポジションを取らなくてはならないのです。リスクのある選択をしていくことでリスクを取る傾向が身につくのです。
親の育て方
あと生まれの子供はリスクを取るようになる理由としては、親の教育というのも関係するのではないか、とも述べています。
創造的な人というのはリスクを取りますが、それは周囲が自主性を尊重してくれるからこそできることです。
第一子は、親に厳しい罰やルールを課されることが多いですが、あと生まれの子の場合は比較的緩くなります。上の兄弟は見逃してもらえなかったことも見逃してもらえるようになります。その結果、リスクを取れるようになる可能性があるということなのです。
あと生まれのデメリット
ここまで、あと生まれの人材の創造性に関する研究とその理由を紹介してきました。あと生まれの人材は、クリエイティブな発想ができる可能性が高いということがわかってもらえたかと思います。
ただ、あと生まれの子にはデメリットもあります。あと生まれの子は、給料のよりよい仕事への転職をいとわなかったり、転職のタイミングが早かったり、転職回数も多い傾向があるというデータもあるのです。また、あと生まれの子の方が、第一子よりも反抗的なケースが2倍多かったというデータもあります。
せっかく採用したのに転職される可能性があっったり、社内でもめることが起こるという可能性もあります。
第一子の人材は?
ここまで、あと生まれの人材はリスクを取ることができるので、クリエイティブな傾向がある、ということを解説してきました。ただ、第一子の人材を採用しないほうがいいということではなく、第一子には別の長所があります。
第一子の方が責任重大な仕事につきやすかったり、第一子の方が学校の成績がよいケースが2.3倍多いというデータがあったり、1500人のCEOを調べた研究では43%が第一子であるというデータがあります。つまり、第一子はリスクは嫌うかもしれませんが、責任感が強く優秀で野心家でもある、ということがいえます。
要は得意不得意の問題ということです。採用したい人材に合わせて、兄弟という視点で応募者を見てみるのがよいかもしれません。
まとめ
弟や妹などのあと生まれの人材のほうが、リスクのある独創的なことを行えるクリエイティブな人である可能性がある、ということを解説してきました。
採用においては、一定のタイプではなく、色んなタイプの人材を採用しなくてはなりませんし、適材適所に配置しなくてはなりません。既存の市場を打ち破るクリエイティブなアイデアを生み出す部門には、弟や妹を配置してみるというのも一つの方法ではないでしょうか?
この一見突飛なアイデアを取り入れるかどうかも、あなたがあと生まれかどうかで決まるかもしれません。
今回紹介した研究は、以下の本を参考にさせていただきました。革新的なことを成す「オリジナルズ」がどうやって成功したか、どんな特徴があるかなどを解説してくれています。自分が独創的なことをするヒントにもなる研究がたくさんありますので、ぜひ読んでみてください!おすすめです!
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